• TOP > 合格者の声
    第2回ととけん 初の1級(上級)で全国1位の鈴木茂弘さん
    第2回ととけん1級(上級)—第1回ととけんで2級(中級)合格者のみが受検資格を有する—全国370名中第1位、岐阜市若宮町で居酒屋を営む鈴木茂弘さんにお話を伺いました

    -1級全国1位94点、マイナス6点が何だったか興味をひかれます。
    5問はケアレスミス、あと1問はいま思い出せませんが全く歯が立たなかったのを覚えています。

    -「ととけん」はどうやってお知りなりました?
    第1回の開催を知ったのは『日経レストラン』の記事。いい取組みだと思った。僕は魚をもっと知ってもらいたくてお店をやっている。でもこんな岐阜の片田舎で小さなお店が1つやるよりも全国規模で生産者から最終的にお客様に提供する側まで、何か一つの取組みがないと先細りしかない。だからこういう(ととけんの)取組みに興味を持った。

    -第1回「ととけん」は、受検されましたか?
    3級と2級を受検した。3級の点数は忘れたが、2級は92点で全国14位だった。

    -とくに勉強されました?
    1年目にガイドブックを購入。知っている所も知らない所もあり、楽しく勉強させてもらった。ただ、受検のための勉強よりも日々の仕事の方が優先。その中で培ったことがどこまで一般の方々の認識に共通するのか、試しに2級を受けた。


    僕は土地土地の文化が食文化であり魚文化だと思っているので、それを「ととけん」は伝えていこうとしているのかと思うと、僕の思っていることと「ととけん」の思っていることが同じことだと気づいた。そしてなんとか2級に合格した。
    1級受検にあたっては改めた勉強というよりも日々自分のやっていることを正確に伝えられるようにならないといけないと思った。お客様に「マグロは何科?」と聞かれた時に、「アジ科だったと思います」「サバ科だったと思います」と曖昧に答えるのではなく、「マグロはサバの仲間です」とはっきり伝えないといけない。

    -1級の問題はどうでしたか?
    はっきり言って思ったより難しかった。あたりまえのようにわかる問題もあったが、栄養のことまで踏み込んでいてハッとした。栄養のことはお客様に聞かれたりアレルギーなど食事制限されている方に対しても、ある程度の知識を持って、血圧に不安を持つ方には醤油をダシで割って薄くして出したり、焼き物の塩を控えたりするなど、お客様の体調や栄養に関わってくることなので、2級を受けた時点でもう一度勉強しなおそうと思った。魚は食ですから「食は命を支えるもの」という意識を持って僕たちも取り組まないといけないと思った。2級・3級を受けている時
    点でハッとさせられた。

    -印象に残っている出題はありますか?
    いまも栄養のことを言ったが、Q19の「イカのなかで可食部100gあたりで最もタウリンを含むのは?—正解:コウイカ」ですね。

    ほかにはQ5の「ギバサ(アカモク)」、能登に行くと「花マツモ」という名で、毎年冬場にとろろに見たてて密かにだしているが、ととけんに出てしまうと有名になって困る(笑)。出題の最初の方だったので、こんな問題が出るのか!と驚かされた。
    後はQ52の「虎魚(オコゼ)」食文化には昔からの云われが密接に関わっている。うちでは初夏にはオコゼは欠かせず、オコゼと山の神の話を自分のブログにも書いたことがある。秋田だけでなく三重にも山の神に奉納する文化が残っている。こういうことがわかっているとお客様も愉しめる。
    もうひとつはQ75の「カメノテ」ですね。昨夏、子供の夏休みに和歌山の白浜・田辺にカメノテをバーベキューにしようと磯遊びに連れて行ったとき、子供にカメノテはエビやカニに近い甲殻類だと教えた。

    -「ととけん」は役に立っていますか?
    お客様とのコミュニケーションや仕入れでものすごく役に立っている。郷土料理なんかも「こういうのも面白いかも」と思う。現に以前はうちでは氷頭(ひず)なますをやらなかったが、東北・北海道ではごくふつうに食べていることをお客様に言ったら、「食べてみたいから作ってくれ」と言われ、季節限定で出すようになった。お客様にとっても産地が見えていいと思う。北海道では氷頭なます、能登ではいしるで小鍋をやっている、などをお客様に伝えていく。

    -ご自身が好きな魚・魚料理は?
    魚料理は刺身がとにかく大好き。魚はカワハギ。



    -「GHEE 胡麻」の季節のおすすめを教えてください。
    <春>
    ●鮎魚女(あいなめ)の刺身
    独特の食感と甘みがある。鮎魚女は太平洋のものが多く、伊勢湾からいいのが入る。
    ●能登の黒もずく
    日本海独特の太くてボリボリした食感。欠かすとお客様に叱られるほど。

    <夏>
    ●鱧(はも)
    鱧文化はこの辺りにはなくて、うちならでは。鱧は湯引きから照焼き、鱧しゃぶまで何でも。
    湯引きは梅肉醤油で提供している。
    ●長良川の天然うなぎ・鮎
    ●輪島と珠洲(すず)の岩ガキ(黄金ガキ)
    ●鯵(あじ)
    鯵は棲む所によって味が違う。(味を確かめてきた中で行き着いた答えは)「季節によって
    産地を変えるべき」。

    <秋>
    ●日本海のガスエビ
    日本海の底引き網漁が9月初めからスタート。(ガスエビは)日本海の底引きモノの恵み。
    富山湾や能登で入って来るし、鳥取辺りまで漁があるので、その時その時でいいものを使う。
    活け魚として食べる。
    ●ノドグロ(赤ムツ)の炭焼き・刺身
    ●能登の鯖
    9〜10月は兵庫の鯖(瀬戸内海で獲れる。一本釣りで船上締めしてある。)1本何千円もするくらい高いが、これは素晴らしい。軽く酢で〆て提供している。酢を感じないくらいで、「刺身で大丈夫?」とお客様に聞かれるが、「酢で〆てありますよ」というくらい軽い酢で〆る。
    <冬>
    ●本マグロ
    大間や竜飛岬のほうの三厩(みんまや)のもの。マグロは鮮度やコンディションが大切なので、うちも青森のものが使いたいが値段や状態が合わなければ能登の沖合であがるものを使う。魚体は小さくて50〜60kgくらいものでもいいのにあたると素晴らしい。
    ●ブリ
    氷見・能登がいい。去年は特に夏が暑かったので、佐渡のブリが一番良かった。
    15〜16kgでまるまる太った素晴らしいブリだった。
    ●ズワイガニ:冬は福井・石川のものしか、使わない。

    -最後に、「ととけん」受検者へのメッセージをお願いします。
    僕は魚を愛しているので、皆さんにも魚を愛してあげてほしい。「魚愛」が知識につながると思う。飼うのも釣って食べるのも魚の愛し方だと思う。僕は食べる方だが、まず捨てない、そして一番美味しく調理すること。それが僕の愛し方。あとはお客様に伝えていくこと。1級受験は東日本大震災後だったので、申し込んだものの受検するかどうか1週間前まで迷っていた。でも、人に伝えるなら1級に合格してからの方が人に(きちんと)伝えられると思い、受検した。(被災した)福島から三陸辺りまで、何があって、いまどうだったかをことばでお客様に伝えていくようにしていて、例えば3月終わりになるとうちは毎年福島県の相馬のズワイガニを仕入れていた。相馬は暖流・寒流がぶつかるいい漁場だったが、いま日本人にとって宝のような場所が原発事故によって失われつつある。悲しい話だが、それも現実だということも人に伝えている。

    【インタビュアー後記】
    1級全国1位の居酒屋店主の方とはどんな方だろう、と想像を巡らせつつお会いした。1時間ほどお話を聞かせて頂き辞去したが、いくら話しても話が尽きない、もっと話したい思いが残った。実に気さくで謙虚な語り口の鈴木さんは、実は20年程前に京料理をやっていらっしゃるご実家から家出(!)されて岐阜市に辿り着かれたとか。鈴木さんが居抜きで「GHEE 胡麻」の店主になられて18年間、おいしい酒(さか)菜(な)(さかなの語源とか)を求めて福井の若狭湾から南知多の師崎、豊浜まで週末に車を走らせて市場へ、そして自ら釣りに行って季節の旬菜を提供されてきた。お店のしつらえも器も、整然とととのえられた板場、そして寛げる客席、どれをとってもまことに居心地の良い居酒屋「GHEE 胡麻」。鈴木さんご本人は‘丹精’という言葉がぴったりの仕事人。1年に12回は訪れたい店であり、会って話したくなる鈴木茂弘さんだった。