• 大寒
    釣りたてをその場でかぶりつきたい

    氷に穴を開け、糸を垂らして小さなアタリをじっと待つ。ワカサギ釣りは日本の冬の風物詩。
    大寒のこの時季に獲れる冬のワカサギは、脂がのり切って身が締まった食べ頃です。天ぷらにしていただくと、白身魚ならではの口当たりのよい食感が楽しめます。
    徳川将軍家に献上されたことに由来するワカサギの漢字表記を選びなさい。

    ①香魚 ②公魚 ③千魚 ④年魚

    ▼解答と解説コラム▼
    【解答】②公魚
    【解説】湖でのワカサギ釣りのイメージが定着していることもあって、ワカサギは淡水魚と思われがちだが、実際には海水魚に分類される。
    水温や水質に対して適応力が高いため、湖や沼などにも生息できる。

    日本最大の漁獲量を誇る青森の小川原湖、そして茨城の霞ヶ浦(かすみがうら)、秋田の八郎湖、北海道の大沼、アマサギ、シラサギといった風雅な名で呼ばれる島根の宍道(しんじ)湖などが有名な漁場である。
    氷上釣りの本場、長野県の諏訪(すわ)湖は大正4年に霞ヶ浦から移植され、いまや有数の稚魚生産地でもある。
    このワカサギが漢字で「公魚」と書かれるのは、江戸時代に霞ヶ浦で獲れたワカサギは11代将軍・徳川家斉(いえなり)に献上され、「公儀御用魚」として扱われたためと伝わる。

    江戸時代に始まった霞ヶ浦のワカサギ漁は7月から12月まで。脂がのり骨がやわらかいことが特徴といわれる。地元ではこの特徴を生かした「半生の煮干し」を食べるのが伝統だ。ほかにも甘露(かんろ)煮、いかだ焼き、佃煮などの加工品は名産として昔と変わらず親しまれている。

    氷結した湖での穴釣りで釣り上げたばかりのワカサギを、寒さしのぎの手あぶり用のコンロで焼いて食うのはうまいに違いない。またその場で揚げてもたまらないだろう。揚げ物は衣をゴテゴテつけるより、小麦粉をまぶす程度の素揚げにし、そこにひと塩すれば充分だ。

    スナック感覚で食べられる加熱したワカサギは、何尾でもいけそうだが、揚げ物が余ったらぜひ南蛮漬けにしたい。このときは二度揚げするとよい。そもそも骨が柔らかく、骨ごと食べられる魚だが、より柔らかく食べるために、ひと手間を惜しまないように。
    一度揚げたワカサギはしばらくそのままおいて常温まで冷ます。
    そうすると中の骨まで油がしみ込み、もう一度揚げたときの熱でしみこんだ油が骨をやわらかくしてくれる。ほかの魚にも適用できる二度揚げのコツだ。

    また南蛮漬けは酸味と甘み、ピリッとした唐辛子の辛味がポイントだ。酸味を強くすればかなり長持ちするから、大事に味わって、冬を堪能したい。

    頭から尻尾まで丸かじり。骨ごと食べられるので、カルシウム補給にはもってこい。さらに低カロリーで鉄分、ビタミンBの含有量も豊富なワカサギ。
    立春から3月にかけてのこれから、産卵期の子持ちが格別においしい時季を迎える。

    ワカサギは独特のキュウリ臭がすると、嫌がる人もいる。それもそのはず、実はキュウリウオ科に分類されている。同じ科に属する③千魚(チカ)は北海道や三陸以北にすみ、姿も味もワカサギに似る。
    ただ、身も骨もよりしっかりしているので、天ぷらにするとやや硬く感じ、フライの方がむく魚。①香魚はスイカもしくはキュウリの香りが好まれるところから、④年魚は春に生まれ、秋に産卵、冬にはその一生を終えてしまう儚(はかな)さからついたアユ(鮎)の別名。